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中小企業のAI導入は何から始めるか。白書のデータと2社の実例

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先に結論です。中小企業のAI導入は、毎週くり返している仕事を一つ選び、2週間だけ試して、かかった時間を測るところから始めることをおすすめします。小さく始めれば、合わなかったときもすぐやめられます。道具選びや全社の計画づくりは、そのあとで間に合います。

この記事では、その理由を2026年版の中小企業白書のデータと、白書に載っている2社の実例で説明します。数字はすべて出典を末尾にまとめました。

AIに取り組んだ中小企業は、約3割

白書のもとになった調査では、2019年以降の省力化投資としてAIの活用に「取り組んだ」と答えた中小企業は30.3%でした(回答5,645社)。7割はまだ手をつけていません。始めるのが遅すぎる、という段階ではありません。

一方で、取り組んだ会社とそうでない会社のあいだには、数字の差が出始めています。売上を増やす目的でAIを使った会社は、2019年から2024年の付加価値額の増加率が中央値で23.0%。取り組んでいない会社は17.9%でした(取り組んだ2,618社、取り組んでいない9,089社)。

ここは読み方に注意が要ります。この数字が示しているのは「AIに取り組んだ会社のほうが伸びている傾向がある」ことで、「AIを入れれば付加価値が増える」ことではありません。もともと投資に前向きな会社がAIにも早く取り組んだ、という面もあるはずです。それでも白書は、地域に根ざして現場を持ち、決めるのが速い中小企業にとって、AIの活用は大企業を追い抜くほどの成長の機会になり得る、と位置づけています。

進まない理由の1位は「どの仕事で使うか思い描けない」

では、なぜ7割が動けていないのか。AIを活用していない会社に理由を聞いた結果(回答3,888社・複数回答・上位5つ)はこうです。

活用していない理由 割合
活用する業務がイメージできていない 63.4%
活用を推進する人材が不足している 40.0%
社内ルール・ガイドラインが整備されていない 26.2%
セキュリティ・情報漏えいへの不安がある 14.5%
必要な予算を確保できない 13.8%

予算は最下位の13.8%です。お金より手前の、「うちのどの仕事に使えるのかが分からない」で止まっている会社が6割を超えています。

裏を返すと、使う仕事が一つ決まれば、最大の壁は越えられるということです。次の2社は、その決め方の参考になります。

実例1 営業の下調べと広告づくりに使った商社(従業員33名)

東京都新宿区の株式会社オプトサイエンスは、大学や研究所、メーカーの開発部門向けに、レーザー関連の光学機器を輸入販売している商社です。

困っていたのは2つ。扱う製品が最先端で、解説書やマニュアルが用意されていないことが多く、営業担当者が海外の論文や英語のマニュアルを自分で読み込んで説明資料を作っていたこと。もう一つは、業界専門誌に年12回出している広告を、広告づくりに慣れていない営業担当者が作っていて、枠を活かしきれていなかったことです。

同社は2023年に生成AIを導入し、社長自身がまず使い込みました。指示文の書き方の勉強会を開き、社員がAIに触れる時間も用意しています。営業担当者は論文の収集と要約、英語マニュアルの翻訳と要点の抜き出しに使い、経験の浅い若手の知識を補えるようになりました。広告は、掲載する商品の選定、キャッチコピーの案、その理由までをAIに出させ、営業担当者が手を入れて仕上げる形に変えています。AIが出した内容は、必ず人が事実確認をする決まりです。

結果として、広告への反応は平均で2倍以上になりました。月平均5件ほどだった広告からの問い合わせが、多い月には45件に達したそうです。宍野吉虎社長は白書の中で「経営資源が限られる中小企業こそ、使わない手はない」と話しています。

実例2 紙とExcelの管理を、自作の業務アプリに置き換えた製造業(従業員85名)

石川県金沢市の岡田研磨株式会社は、建設機械や産業機械向けの部品の加工・組立てを手掛ける会社です。

専務の岡田雄太さんが入社した2020年当時、図面をはじめとする情報は紙とExcelで管理されていました。工場の担当者が作った資料を事務の担当者が別の資料に写して集計し直す。資料を探し出すのに1〜2時間かかることもある。そうした手間が積み重なっていました。

岡田専務は約2年間、合計1,000時間以上AIと対話を重ねながら、自社専用の情報管理の仕組みを作りました。検査の実績、品質報告、在庫、生産の進み具合から、労務や原価の管理まで、約30種類以上のアプリが一つにまとまっています。

これにより月5,000〜6,000枚分の紙がなくなり、労働時間は月530時間ほど減りました。手順書づくりを支える仕組みも入れたところ、それまで150件ほどしかなかった手順書が、わずか4か月で240件ほど増えています。白書はこの取り組みを、業務の属人化の解消と、若手の育成を加速させた例として紹介しています。

2社に共通していること

業種も規模も違いますが、やり方には共通点が3つあります。

  1. 道具からではなく、困っている仕事から入っている。 「論文を読む時間」「資料を探す時間」という、はっきりした困りごとが先にありました
  2. 経営層が自分で触っている。 社長や専務が最初に使い込み、そのうえで社員が触れる時間と場を用意しています
  3. 人の確認を残している。 オプトサイエンスは、AIの出した内容の事実確認を決まりにしています。任せきりにしていません

特別な設備や大きな予算の話は、どちらの事例にも出てきません。

自社で始めるなら、この4つの手順で

  1. 毎週くり返している仕事を一つ選ぶ。 営業の報告書、問い合わせへの返信、見積の説明文、議事録など。判断の難しい仕事より、形が決まっている仕事が向いています
  2. 期間を2週間と決めて、小さく試す。 担当者は1〜2人で十分です。全社に広げるのは結果を見てからにします
  3. 数字を3つ測る。 準備から確認までにかかった合計の時間、やり直しの回数、ツールの利用料。始める前の数字も控えておくと、続けるかどうかを迷わず決められます
  4. うまくいった手順を書き残し、担当を決める。 一人だけが使える状態で止めると、その人が忙しくなった時点で元に戻ります

白書の調査で3番目に多かった「社内ルールが整備されていない」も、この4つ目の段階で一緒に片づけるのが現実的です。何を入力してよくて何はだめか、誰が最後に確認するか。試した仕事一つ分のルールなら、1枚で書けます。

宮崎をはじめ地方の会社での進め方、費用の目安、つまずきやすい点は、宮崎の中小企業のためのAI導入ガイドに順番にまとめています。

出典

  • 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」事例2-2-3 株式会社オプトサイエンス(第2部第2章第1節
  • 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」事例2-2-14 岡田研磨株式会社(第2部第2章第2節
  • 中小企業庁調査室「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年6月)16〜17ページ。AI活用の状況、活用していない理由、付加価値額の増加率。もとの調査は(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」

まず、30分

「うちなら、どの仕事から試すのがよさそうか」。その段階からで構いません。導入の計画を用意していただく必要はなく、いま手間がかかっている仕事を教えていただければ、最初に試す仕事と、測る数字を一緒に整理します。

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